写真は現実をそのまま写すものと思われがちですが、私にとっては「どんなふうにその瞬間を“感じたか”」を写すものです。たとえば、目の前のモデルが光の中で静かに佇んでいた時、私が感じたのは“涼やかさ”や“哀しみ”、あるいは“救い”でした。それを写真として再構築するために必要なのが「artisticレタッチ」です。

記録写真とartisticレタッチの違い

たとえば、以下の写真をご覧ください。

顔にかかる斜光。目線の先に希望があるのか、それともただ遠くを見つめているのか。この写真は、現場で見たときよりも“静けさ”を強調するよう、背景の暗部を締め、肌のハイライトを抑えています。

◾️artisticレタッチPoint

・背景を沈めて被写体の表情に集中させる。
・肌のコントラストを柔らかくして内面的なニュアンスを演出。

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空気感を写し込むレタッチ

このカットは室内の柔らかい自然光に包まれています。レタッチでは、壁の木材の色味と肌トーンの調和を意識しました。記録としての“正しい明るさ”よりも、“この空間の空気”を写すことを優先しています。

◾️artisticレタッチPoint

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・カラーバランスはニュートラルではなく「温度感」を重視。
・背景のノイズ感を程よく残すことで、場の「静寂」を表現。

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感情の余白を残す

このカットは、モデルが目を伏せている一瞬を切り取ったもの。レタッチでは意図的に露出を抑え、暗部を深くしています。観る側に「何を思っているのか」を委ねるための余白作りです。

◾️artisticレタッチPoint

・シャドウを暗くし、ミステリアスな印象を強調。
・ノイズや肌のディティールは敢えて残す。

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現実に寄せる or 離れる

このカットだけは少し方向が異なります。外光の中での笑顔。この写真はほとんど記録に近い印象ですが、artisticレタッチでは「木漏れ日の質感」と「光と影のパターン」を大切にしながらも、背景を少し青寄りに調整することで、“真夏の思い出”のような空気感を与えています。

◾️artisticレタッチPoint

・影のディティールを潰さず丁寧に調整
・肌の赤みを抑えて、透明感を演出
・彩度を抑え、記憶の中の色味へ寄せる

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artisticレタッチは、事実を捻じ曲げるものではありません。むしろ、撮影者が「その瞬間をどう感じたか」を伝えるための技術です。写真に“表情”を与えるこの作業は、ある意味で写真という「見た目の記録」を、「心の記録」に変える魔法なのです。

Model : instasasori
Location : Nafsha Seed